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ガバナー(遠心調速機)の紹介

ガバナー、もしくは遠心調速機と呼ばれる以下の装置は、もともとは蒸気機関の回転数を制御する目的で使用されていた機械仕掛けの制御装置で、とても原始的で動作原理が目で見て理解しやすいことから制御工学の入門書で紹介されることも多いです。

 

遠心調速機は回転する重りの遠心力を利用して、回転軸の回転速度を検出することができるようになっています。回転速度が速いときには重りの遠心力も強く働くことから、重りは重力に逆らって上の方へ移動します。逆に回転速度が落ちると重りに働く遠心力も落ちることから、重りの位置は重力によって下の方まで下がってきます。上下する重りの位置によって蒸気機関の出力を変えてやることで負荷の変動に関係なく、常に一定の回転速度を維持する制御装置をつくることができます。

実際の蒸気機関で実験するのは大変なので、蒸気機関の代わりに模型用モーターを使って遠心調速機の実験をしてみました。以下の動画では遠心調速機の重りが一定より下がった時(回転速度が落ちた時)にはモーターの印加電圧を上げる方向へ、逆に重りが一定より上がった時(回転速度が上がった時)にはモーターの印加電圧を下げる方向へモーター出力を調整するフィードバック制御の仕組みが構築してあります。目標となる回転速度はスライド式の可変抵抗の値で与えられるようになっています。

 

実験装置の概要

システムの概要は以下のようになっています。

R1~R4はオペアンプで減算回路を構成しています。(減算回路はR1=R3、R2=R4、の条件で使用します。)この減算回路は可変抵抗器の電圧(目標値)から、ポテンショメータの電圧(制御量)を引き算した値(偏差)に(R2/R1)の値(ゲイン)を掛け算した値を出力します。

減算回路の出力がそのままモーターへの出力電圧(操作量)となっています。一般的なオペアンプではモーターを駆動させるほどの大電流を流すことはできないので、減算回路の出力の先に大き目な電流を流せるトランジスタでエミッタフォロワ回路を構成しています。

実験動画内で使用したオペアンプはTL084CNです。抵抗値はR1=R3=Raが100kΩで、R2=R4=Rbが470kΩの抵抗値を使用しました。

ガバナー(遠心調速機)の実験装置の作り方

実験で作成した遠心調速機は3Dプリンターで作成しました。3Dプリンター用のデータは以下のリンクからダウンロードできるようにしてあります。

ガバナー(遠心調速機)の3Dデータ.zip

 

上のリンクからダウンロードしたzipファイルを展開すると、以下のファイルが得られます。

Governor_1.stl、Governor_2.stl、Governor_3.stl、Governor_4.stl、Governor_5.stl、Governor_6.stl、Governor_7.stl、Governor_8.stl

このうちGovernor_3.stlとGovernor_4.stlは2本ずつ作成します。

 

この実験装置では3Dプリンターで作成する部品以外にもいくつかの部品が必要です。上下するガバナー(遠心調速機)の位置を計測する目的で使用しているのが、RDC50A003というポテンショメータです。RDC50A003は2018年12月現在、秋月電子通商さんの以下のページから購入することができます。

http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-01597/

 

土台となるユニバーサルプレートにポテンショメータを固定する目的で使用しているのはM3の長さが30mmのスペーサーです。

 

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土台にはタミヤの「楽しい工作シリーズNO.98」のユニバーサルプレートを使用しています。各部品の配置位置は以下のようになっています。(写真は土台の裏側から撮影したものです。)

 

 

制御対象としたのは同じくタミヤの「楽しい工作シリーズNO.167」のシングルギヤボックス(4速タイプ)です。ギヤ比は38.2:1の組み合わせで使用しました。シャフトはぎりぎりまで上に伸びるように固定し、Governor_5の部品に対して以下のような方向でねじ止めします。

 

 

ポテンショメータは以下のようにして設置します。ポテンショメータは写真の手前側の端子が+側になるようにして使います。(奥側の黒いコードがGND、真ん中の灰色のコードが信号線です。)この方向で使うことでガバナーが上方向へ移動するときにポテンショメータの値も上がるようになります。

 

3Dプリンターで出力した部品は以下のようにして組付けます。関節の軸として使用しているのはM2で長さが8mmのネジです。重りとしてGovernor_4の部品にはめ込んでいるのはM6サイズのナットです。

頭の部分についているネジはM3のネジですが、これは何か別の部品を接続したりするときのために用意したものなので、このまま使う分には特に必要ありません。

 

仕上げと調整

3Dプリンターで出力した部品は表面に凸凹が残っているのでやすり掛けなどして整えます。以下のように重りを上下に動かしても抵抗がない状態にします。

 

各関節部分には以下のように少し隙間が残るようにします。M6のナットは中心がGovernor_4部品の中心と一致する位置まではめ込みます。

 

Governor_2の円盤部分はGovernor_7のスリット部分に差し込むかたちで組み上げます。

 

Governor_6のスリットにGovernor_7の横棒が差し込まれるようにします。およその位置関係は以下のようになります。

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