M1~M5までの番号が付いた台形の記号は信号経路を切り替えるマルチプレクサ回路です。そして矢印の線は信号が伝わる配線の経路を示していて、出力端子から入力端子の方向へ矢印が向かうように描かれています。
「PC」と書かれた少し長めの長方形は「プログラムカウンタ」というレジスタ回路を示しています。プログラムカウンタは次に実行すべき作業命令が書かれたメモリ回路内の番地(アドレス)を常に示しています。このCPUではプログラムカウンタのサイズを16ビットにすることにしました。0番地から65535番地までのアドレスを扱うことができます。
その他の短めの長方形は全て8ビットのレジスタを表しています。これらには全て名前が付いていて、それぞれの大まかな役割は以下のようになっています。
「WR」レジスタ:計算途中の数値を一時保存しておくためのレジスタです。使用頻度が高く、とても重要なレジスタです。作業用のレジスタという意味でワーキングレジスタと呼びます。
「IR1」レジスタ:インストラクションレジスタという現在実行中の命令を保存しておくレジスタです。このCPUでは命令のサイズを16ビットにしたので8ビットのインストラクションレジスタを2つ使って命令を保存しています。IR1レジスタは2つあるインストラクションレジスタのうちの1つ目のレジスタで、命令を識別するための信号を保存する役割を持っています。このIR1レジスタに保存された識別信号に従ってCPU内の配線経路が変化したり、特定のレジスタの内容が更新されたりすることで命令が実行されるような仕組みになっています。
「IR2」レジスタ:IR2レジスタは2つあるインストラクションレジスタのうちの2つ目のレジスタで、命令で使用される数値やアドレス番号などを保存する役割を持っています。例えば「データ転送命令でワーキングレジスタに保存する数値」や、「足し算命令に使用する数値のアドレス番号」などが保存されます。
「HR」レジスタ:ハイアドレスレジスタというアドレス番号の上側の8ビット分を保存しているレジスタです。このCPUで使用するメモリ回路はアドレスのサイズが16ビットあるため、上で説明した8ビットサイズのIR2レジスタだけでは全てのビットを表現することができません。そこであらかじめHRレジスタに指定したいアドレスの上側8ビットを保存しておいて、IR2レジスタには指定したいアドレスの下側8ビットだけを保存するようにすればHRレジスタとIR2レジスタの2つを合わせて16ビットサイズのアドレスが表現できるようになります。HRレジスタは8ビット単位でデータを扱う8ビットコンピュータ上で、16ビットのアドレスを表現したい時に使われるレジスタです。
「P1」「P2」レジスタ:コンピュータの外部に接続する機器やセンサー等から数値を入力する時に使う入力端子です。
「P3」「P4」レジスタ:コンピュータの外部に接続する機器やモータドライバ等へ数値を出力する時に使う出力端子です。
次のページではCPUの動作を決定する「命令」の構造について解説していきます。