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トランジスタが1つだけでは単純なスイッチのような機能しか実現できませんが、複数のトランジスタを組み合わせる事でもう少し複雑な機能を実現することができるようになります。

コンピュータは私たちの身の回りにあるさまざまな情報(数値、文字、色や音声、その他スイッチのONOFFやモーターの回転速度など)を扱うことができますが、このような情報は全てコンピュータ内部では無数のトランジスタのONOFFの組合せによって表現され、記録されています。

これはちょうど暗号のようなものです。例えば「りんご」「みかん」「いちご」「バナナ」という4つの果物の存在を情報としてコンピュータ内で扱う必要が出てきた場合、例えば2つのトランジスタのONOFF状態の組合せに対してそれぞれの果物を割り当てます。ONOFFの2つの状態を持つトランジスタが2つあるので組合せの数は全部で4通りあります。

 

ONとOFFの組合せに割り当てられる情報

図4.ONとOFFの組合せに割り当てられる情報

 

どの組合せに対してどの果物の名前を割り当てるかは自由に決めてしまって大丈夫です。ただの識別番号のようなものなので処理の途中で変更したりしなければ「りんご」に対してどのパターンを割り当てても構いません。

果物の種類が4つ以上になっても大丈夫です。2つだったトランジスタの数を3つに増やせば、作り出せるONOFFの組合せの数は8通りに増えます。

 

トランジスタの数と表せる情報の数

図5.トランジスタの数と表せる情報の数

 

上記のように、使用するトランジスタの数を増やすことでON/OFFの組合せの数は無限に増やすことができます。数値、文字、色といった情報を識別するにはより多くの組合せが必要となるので、多くのコンピュータでは少なくても8つのトランジスタを1組にしてON/OFFの組合せを作ることが一般的です。8つのトランジスタで作り出せるON/OFFの組合せの数は256通りになります。この場合は256種類の数値、256種類の文字、256種類の色などを扱うことができるようになります。

 

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これまでの説明に出てきた「トランジスタのONOFF」という状態は、実際の回路上では「電圧の高低」という、物理的に検出しやすいかたちで計測できるように回路が作られています。

トランジスタのONOFFの状態は以下のような回路を組むことによって「電圧の高低」というかたちで測定できるようになります。

 

電圧で表される情報

図6.電圧で表される情報

 

上図の回路ではトランジスタのコレクタ端子と抵抗の間から出力端子が出ています。この回路ではトランジスタがONになると抵抗に電流が流れるようになっています。(上図のトランジスタ1の状態)

トランジスタがONになると抵抗では流れ込んだ電流によって電圧降下が生じますので(オームの法則)、その結果、出力端子の電位は0[V]付近まで低下します。

逆にトランジスタがOFFになると(上図のタランジスタ2の状態)抵抗に電流が流れなくなるため抵抗での電圧降下も発生せず、出力端子の電位は電源電圧と同じ3[V]になります。

 

上記の回路のように、これまでの説明に出てきた「トランジスタのONOFF」という状態は、実際の回路では「電圧の高低」というかたちで出力されてきます。よく「コンピュータは0と1の情報だけで全てを処理している」などという表現でコンピュータの仕組みが説明されることがありますが、これも電圧の「高い」「低い」を数値の「1」「0」に置き換えて表現しているだけで言おうとしている事は同じです。

大事なことはトランジスタの「ON」「OFF」という動作によって出力電圧が「高い」状態になったり「低い」状態になったりする2つの状態を持つ回路が作成できるという点と、2つの状態を持つ回路を複数組合せることによって様々な情報を識別パターンに割り当てて表現する事ができるという点です。

このような特徴を持つ回路のことをデジタル回路と呼びます。コンピュータもデジタル回路の一種です。

デジタル回路の世界では回路の出力電圧が「高い」状態を数値の「1」として扱い、回路の出力電圧が「低い」状態を数値の「0」として扱うことが多いです。これは数値を「1」と「0」だけで表現できる2進数という表現方法がコンピュータ上で数値を扱うのに便利に利用できるためです。2進数についてはまた後ほど、解説の中で少しづつ紹介していきます。

 

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