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前のページでは、同じ3[V]でも電池が出力する3[V]とデジタルICの出力する3[V]では「出力インピーダンス」が異なる、という話をしました。電池の出力する3[V]では回るモーターが、デジタルICの出力する3[V]では回らないというその理由は「出力インピーダンス」の違いにあります。この事を理解するために回路どうしを接続した時に起こる、回路内部での変化について見ていきましょう。

マイコンなど実際のデジタルICはとても複雑なので、代わりにとても単純化したNOT演算回路を作成してみました。以下の回路は3[V]の電源で動作し、入力された信号を反転して出力します。

出力インピーダンス解説-NOT回路1

この回路の入力端子にHigh電圧をかけるとトランジスタがONの状態になり、抵抗R2に電流が流れます。抵抗R2に電流が流れるとR2で発生する電圧降下の影響で出力端子の電位はLow電圧まで下がります。

逆に入力端子にLow電圧(0V付近の電圧)をかけるとトランジスタがOFFの状態になり、抵抗R2に電流が流れなくなります。抵抗R2に電流が流れなくなるとR2では電圧降下が発生しなくなるので、出力端子の電位はHigh電圧、具体的には電源電圧の3Vまで上がります。

このことから上記の回路はHigh電圧を入力すればLow電圧を、Low電圧を入力すればHigh電圧を出力するNOT演算回路として機能することがわかります。

次にこのNOT回路の出力端子を別の回路の入力端子につなげてみましょう。例として以下のような回路を接続してみます。

負荷抵抗

回路と言ってもただの100Ω抵抗です。この2つの回路を接続すると以下のようになります。

回路の接続

NOT回路の接続先の回路に電流が流れるのはNOT回路の出力がHigh電圧になった時です。この時、接続先回路のRL抵抗に流れる電流はいくらでしょうか?

NOT回路の出力端子からHigh電圧が出力されるのはNOT回路のトランジスタがOFFになった時です。OFFになったトランジスタには電流が流れていかないのでこの部分を無視すると、この時の回路は以下のようになっています。

分圧される出力電圧

3Vの電源からGNDまで、R2とRLの2つの抵抗が直列につながっているので、オームの法則より、3[V] ÷ (100[Ω] +100[Ω])で流れる電流は15[mA]になります。

ここで注目してもらいたいのがNOT回路の出力端子の電圧です。抵抗R2に15[mA]の電流が流れるという事は、R2で発生する電圧降下の影響により、NOT回路の出力端子の電位は(電源電圧3[V] − (100[Ω] ×15[mA]))で1.5[V]ということになってしまいます。

出力端子の先に別の回路をつなげる前は電源電圧である3VのHigh電圧が出力されていたはずですが、出力端子の先にRLがつながってしまった事で出力電圧は1.5[V]まで下がってしまいました。

これが回路どうしを接続した時に起こる回路内部での変化です。このような出力電圧の低下は大きいか小さいかの違いはあっても、出力端子から流れ出る電流がある限り発生してしまいます。そしてこの例でいうR2抵抗のようなものを「出力インピーダンス」、RL抵抗のようなものを「入力インピーダンス」と言っています。

上記のような出力電圧の低下をなるべく小さく抑えるにはどうすれば良いでしょうか。上の回路図から出力端子の電位はR2抵抗とRL抵抗からなる分圧比によって決まることがわかります。例えばRL抵抗が100Ωではなく900Ωであった場合、出力端子に流れる電流は3mAとなり、R2抵抗での電圧降下も0.3Vに抑えることができるでしょう。

このように2つの回路を接続する時には「入力インピーダンス」に対して「出力インピーダンス」が小さい方が出力電圧の低下を低く抑えることができるのです。このページの最初に例として出したNOT回路の入力端子には10kΩの抵抗が付いていますが、これも出力インピーダンスに対して入力インピーダンスを十分高い状態にしておきたいという考えがあって決めた値です。実際のデジタルICでも入力インピーダンスは出力インピーダンスに対して十分高くなるように設計されています。

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それでは前のページからの課題であった「電池の出力する3[V]では回るモーターが、デジタルICの出力する3[V]では回らない理由は何か?」という問題に付いて考えてみます。まずFA-130RAというモーターに付いてですが、このモーターはマブチモーターのサイトによると「適正電圧・負荷時の消費電流」が500[mA]と記載されています。直流モーターは本来なら単純な抵抗として置き換える事はできないのですが、3[V]の電圧をかけて回っている時に500[mA]の電流が流れているとすると、かなり大雑把に考えれば3[V] ÷ 500[mA]で6[Ω]ぐらいの抵抗を持っている状態だと考えることができます。

この状態のモーターが上記のNOT回路の出力端子に接続されたとしたらどうでしょうか?RL抵抗が100[Ω]ではなく6[Ω]になってしまうので、出力端子に流れる電流は約28[mA]、出力端子の電位、すなわちモーターにかかる電圧は28[mA] ×6[Ω]で、約0.17[V]まで下がってしまいます。つまり、テスターで測った時には3[V]出ていたデジタルICの出力端子は、モーターを接続した瞬間に電圧が大幅に下がってしまうため、モーターを直接回すことができない。というのが最初の問題の答えです。

回路どうしの接続においてはこのような出力電圧の低下は必ず起こります。例えばテスターでデジタルICの出力端子を測っている時にも電圧の低下はわずかながら起こっています。テスターは測定対象の回路に対してできるだけ影響を与えずに電圧測定ができるのが望ましいので、入力インピーダンスが高くなるように設計されているのです。(デジタルテスターであれば安いものでも1[MΩ]、通常のものは10[MΩ]の入力インピーダンスを持っているそうです。アナログテスターでは少し低くなり、測定レンジにもよりますが数十[kΩ]のものが多いようです。)

テスターの入力インピーダンス

 

また電池をモーターに接続した時にも電圧の低下は起こります。電池は電力を供給することが目的のものなので、もちろん出力インピーダンスは低くなるように作られていますが、それでも出力インピーダンスが0というわけではなく、わずかながら内部抵抗を持っています。電池の種類や使用状況によっても変わるようですが、およそ0.5[Ω]前後の内部抵抗を持つものが多いようです。

電池の内部抵抗

 

ここまでの説明で「なぜ最初からデジタルICの出力インピーダンスを低くなるように作らないのだろう?」という疑問を持たれる方もいるかもしれません。確かにマイコンなどの出力端子が低い出力インピーダンスになるように作られていれば、直接モーターを接続してON/OFF制御などができるはずです。もしくは「モーターの入力インピーダンスが高ければ良いのに」と考える方もいるかもしれませんね。

まず最初に出てきたNOT演算回路ですが、例えばこの回路のR2抵抗が100[Ω]ではなく1[Ω]であったとしたらどうでしょうか。

出力インピーダンス解説-NOT回路1

この場合、確かに出力インピーダンスは低くなるのですが、出力信号がLow電圧に切り替わるたびに3[V] ÷ 1[Ω]で3[A]もの電流が流れることになってしまいます。元の回路が30[mA]で動作するのに対して、R2が1[Ω]の回路はとても消費電力の大きい回路です。さらにトランジスタに大きな電流を流そうと思えば、その分トランジスタの面積を大きくしなければなりません。消費電力が高く、サイズの大きい回路は経済的ではないので作られないのです。

モーターの入力インピーダンスを高くするという案の方はどうでしょうか。モーターの入力インピーダンスを高くした場合、確かに端子電圧の低下は起こりません。しかし同時にモーター内で磁界を発生させるために必要な電流がほとんど流れていかないために、回転トルクが極めて低いモーターになってしまうでしょう。

大きな電流を流す必要がある回路の入出力インピーダンスは低く、逆に大電流を必要としない回路の入出力インピーダンスは高くなるように作られています。デジタルICはHighかLowかと言った「情報」さえ次の回路に伝えられれば良く、経済性の面からあまり大きな電流を流せるように作られていません。逆に電池やモーター、電球と言った、電気エネルギーを運動エネルギーや光のエネルギーなどに変換するために作られた部品は、大きな電流を流せるように作らなければそもそもの役割を果たすことができません。これは回路の目的が情報の伝達にあるのか、エネルギーの伝達にあるのかの違いになります。

また、ここまでの解説で500[mA]という数値が電子工作の世界ではかなり大きな電流として扱われると言うことが、感覚的にもお伝えできたのではないかと思います。なので最初のページで書いた1[A]という電流は電子工作の世界では相当大きな電流と言うことになります。

このような大電流を必要とするモーターや電球などをマイコンで制御する場合には、間に「電流増幅回路」を入れて制御する必要があります。

 

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