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上のページでトランジスタとは電気的にON/OFFがコントロールできるスイッチのようなデバイスであるという話をしました。ベース端子に電圧をかけてベース・エミッタ間に少量の電流が流れるような状態を作ると、コレクタからエミッタへと電流が流れる状態になります。(コレクタに電源が接続されていることが前提です。)

デジタル回路として使用されるトランジスタに関しては上記のようなスイッチ機能の説明だけで大体の動作が理解できるのですが、アナログ回路として使用されるトランジスタの動きに関しては上記の説明だけではなかなかイメージするのが難しいと思います。というのもアナログ回路では「増幅回路」としてトランジスタが登場するのですが、「スイッチ機能」と「増幅機能」というのはなかなか結びつけてイメージすることができません。全く別の機能を持ったデバイスにも思えるのですが、アナログ回路として使用されるトランジスタもデジタル回路として使用されるトランジスタも全く同じものです。

トランジスタとよく似た働きをするデバイスとしてリレーがあげられます。リレーには完全にONかOFFかの2つの状態しか存在しませんが、トランジスタにはONとOFFのちょうど中間地点、微妙にONになっていて少し電流が流れ初めている…というような状態が存在します。この状態をうまく利用することでトランジスタの増幅作用が機能するようになるのです。リレーでは実現できない、トランジスタだからこそできるのがアナログ信号増幅です。

以下の図は電子工学の教科書などでよく見かけると思います。横軸がベース・エミッタ間にかける電圧で、縦軸がベース・エミッタ間に流れる電流です。

トランジスタのIb-Vbe特性

この図が表しているのはベース・エミッタ間にかける電圧が0.6~0.7V付近になるとトランジスタがONの状態に切り替わって急激に電流が流れ始めるということです。このベース・エミッタ間の動作はダイオードやLEDと同じです。(トランジスタのベース・エミッタ間の接合とダイオードのアノード・カソード間の接合は同じPN接合なので構造的にも全く同じです。)

そしてこの図をよく見てみると、0.6や0.7Vで垂直に立ち上がる訳ではなく、若干の傾きを持って立ち上がっていることがわかると思います。これは実際のトランジスタは特定の電圧を境に完全にONになる訳ではないということを表しています。(もしトランジスタがリレーのような完全にOFFからONに切り替わる特性を持っていたら、この図の立上りは垂直になるはずです。)

理想トランジスタ特性

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この若干の傾きを持った区間でベース電位を微細に動かすと、そのベース電位に大体比例した形でベース電流が増減します。上図を見ても分かる通り、ベース・エミッタ間の電圧と電流の関係は決して比例の関係ではないのですが(非線形特性)、動かすベース電位の範囲をものすごく小さい電圧範囲に限定してしまえば、大体はベース電流がベース電圧に比例して変化しているように見えるだろう、(線型性があるように見えるだろう)だからこの部分は比例するということにしてしまって単純化して扱おう、ということになっているのです。(線形近似という考え方です。)

トランジスタの線形近似

 

ですのでベース電位の動く範囲が線型近似できる範囲から大きく外れてしまうと増幅した後の波形の歪みが大きくなってしまいます。

ここまでの話はあまりすっきりとしない内容ですが、この曖昧な部分の納得ができればあとは簡単です。コレクタ・エミッタ間にはベース電流に直流電流増幅率hFEをかけた分だけの電流が流れるので、コレクタ側の電流もベース電位の微小な変化に連動して大きくなったり小さくなったりします。コレクタ・エミッタ間に大きな電源を接続しておくと、ベースに入力された微細な信号波形と同じ形の変化が大きな電源の方にも起こせるので、小さな信号の変化をそのままの形で大きな信号の変化としてコピーすることができるのです。これをトランジスタの増幅作用と呼んでいます。

この「増幅」という言葉から連想されるイメージによってトランジスタに入力された信号がそのまま大きくなって出力されるように考えてしまいがちなのですが、最初にこのようなイメージを持ってしまうと実際のトランジスタの動作を理解する妨げになってしまいます。「増幅」というよりは「複写」とか「拡大コピー」とかの方が実際の動作に近いです。

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