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固定バイアス回路とは電源とベースの間を1本の抵抗でつないでバイアス電圧をかける、最も単純で原始的なバイアス回路の方式です。自己バイアス回路電流帰還バイアス回路のようなhFEの変動に対する調整機能を持っていないため、温度変化などの影響を受けやすい回路です。

固定バイアス回路

最も原始的なバイアス回路であり、抵抗値の決め方はLEDを光らせるときに用いる電流制限抵抗の決め方と同じです。トランジスタのベース・エミッタ間への電流の流し方についてはこちらのページで詳しく記載しています。

固定バイアス回路-2

抵抗 R = (電源電圧VCC – トランジスタ立上り電圧VBE) / ベース・エミッタ間に流す電流値IB

ベース・エミッタ間に流す電流値はコレクタ・エミッタ間に流す電流値から逆算して考えます。ベース・エミッタ間電流はコレクタ・エミッタ間電流をhFEで割った数値になるので、上の式を以下のように表すこともできます。

固定バイアス回路-3

抵抗 R = (電源電圧VCC – トランジスタ立上り電圧VBE) × hFE / コレクタ・エミッタ間に流す電流値IC

コレクタ電流の値ICはトランジスタの周波数特性や雑音特性に影響を与えます。周波数特性が最も良くなる電流値と雑音特性が最も良くなる電流値は異なるため、本格的な回路設計では回路に要求される仕様を検討しながら慎重にコレクタ電流を決定していく必要があります。

まず、設計者がICをどの程度流すか決めます。

ICの値が決まったら、不可抵抗RLを、I× RL が、だいたい電源電圧の半分ぐらいになるように決めます。(RLに現れる増幅後の出力波形が、上下に振幅する余裕を確保するために、無入力時のI× RL は電源電圧の真ん中ぐらいに設定します。このことを「動作点」を決める。と言います。)

この回路の電圧増幅度は以下の式で表されます。

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電圧増幅度 Av = hFE × RL / hie

RL:負荷抵抗

hie:トランジスタの入力インピーダンス(入力抵抗)

ただ、この電圧増幅度の式にはhieという求めにくいパラメータが使われています。実際に電圧増幅度を求めたい場合は以下の近似式を使った方が便利です。

電圧増幅度 Av = 相互コンダクタンス gm × 負荷抵抗 RL

       = ( コレクタ電流 IC / 熱電圧 VT ) × 負荷抵抗 RL

       = コレクタ電流 IC × 負荷抵抗 RL / 26mV

VT:熱電圧≒( 26mV )

熱電圧 VT = k × T / q ≒ 26mV

k:ボルツマン定数 1.3806488×10-23

T:絶対温度 300[K]

q:電子電荷 1.602177×10-19

電圧増幅度に関して、詳しくはこちらのページをご覧ください。

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